ことわざと慣用句

語彙を増やす上で重要なものの一つは慣用句です。

慣用句とは昔から習慣として使われてきた言い回しです。中には心情を表す慣用句、たとえば「胸が痛い」「あっけにとられる」などがあります。

これらは言外に心情を伝える比喩的な表現ですが、単に知識として重要なだけではありません。「胸が痛い」には文字通りの「胸部が痛い」という意味の他にも「辛い・心配だ」などの意味があることを知ることで、「言葉には、字義以外の意味がある」と気づくきっかけになります。慣用句に多く触れることで、想像力を働かせることができ、比喩的表現にも敏感になるのです。

比喩とは「あるものを、他の物ごと(の性質)を借りて説明すること」です。比喩を使うことで表現に深みが生まれますが、読む側も、その深みを味わうために比喩を読み解く必要があります。

比喩を読み解く練習素材としてもうひとつ注目していただきたいのは「ことわざ」です。

「ことわざ」は昔から受け継がれてきた教訓であると同時に、比喩表現でもあります。「かわいい子には旅をさせよ」「時は金なり」など、そこにどのような比喩が用いられているのか、またなぜそう言えるのかを考えて(記述して説明して)みてはどうでしょうか。

例えば「かわいい子には旅をさせよ」ということわざには、「旅をさせる」という比喩が用いられています。「旅をさせる」とは何の例えで、実際はどうすることなのか、なぜ「旅をさせる」ことが必要なのか。意味を覚えつつ、これらのことを説明しようとするだけでも、比喩を読み解く読解力、ひいては記述力の向上につながります。

投稿者

長尾 一毅
長尾 一毅Accompany代表社員
現大阪公立大学大学院修士課程卒。大学・大学院では発達心理学を専攻し、ワーキングメモリ、子どものカテゴリー形成について学ぶ。
奈良・兵庫の教育業界で15年以上、様々な教科を指導し、国語科教科主任も担当。一般社団法人ワーキングメモリ教育推進協会の認定も受け、脳科学の知見やコーチング技術を指導に活かしている。