「自分の力で解決しようとする」ための読解課題

これまで15年以上にわたって、様々な授業形態において、小中高生の学習指導に携わって参りました。
様々な科目を教えましたが、15年、一貫して国語の指導には携わって参りました。

その中で、読解力が全ての思考の基礎にあることも実感しました。
書かれていること、話されたことを正しく理解した上でなければ、正しい思考はできません。
相手の話を曲解したままで自説を展開しても、議論は進みませんし、問いを読み違えれば、正しい答にはたどり着けません。また、教科書の内容を正しく読めなければ、ものごとの理解も得られません。

これまで、「読解力向上の方法が解らない」という悩みを数多く生徒様や保護者様からいただき、自分なりにどのような授業であれば、読解力をつけてあげることができるのかを試行錯誤してまいりました。その中で結論として出たものは「文章を丁寧に読み、様々な疑問を持ち、その解決を繰り返していく」というある意味、当たり前のことでした。文章中の一つ一つの表現に注意を払い、どういう意味か、またはどういう意図でその表現が選ばれたのかを考えながら読むということです。言葉の意味がわからなければ辞書で調べる、指示語の内容がわからなければ、直前の内容をふりかえる。難しい表現であれば、自分なりに言い換えてみて、それが同じような意味になっているかを先生と確かめる。また、先生が発問を行い、子どもに疑問を呼び起こすことも必要です。

このようなアプローチは、読解力向上には不可欠であり、個別指導、集団授業であっても教材や発問の工夫によって十分可能だということがこれまでの経験の中でわかっております。また、文章のどのような部分に注目しなければならないか、記述問題なのであれば、どのような指針をもって答の材料集めをするべきか、などの最低限使いこなすべき道具を知っておくことも必要です。こちらは集団指導、個別指導問わず必ず説明しなければならない事項です。どちらの授業形態であっても、読解力向上に必要なことを伝え、一緒に行う準備がこちらにあります。

また、そのような中で出会ったのが、かつて灘中で教鞭を取られていた故・橋本武先生の国語授業です。「銀の匙」という一冊の本を少しずつ丁寧に、三年間をかけて読んでいくというスロー・リーディングの手法も、子どもたちの読解力を向上させるのに有効だということに思い至りました。そこで、少人数のオンライン授業で、ひとつの文章を使い、様々な発問を行い、文章の理解を深めていくスタイルの授業も提案することにいたしました。

決して答えを安易に教えるのではなく、発問の中で気付きを得ながら、問題解決を行っていく。その繰り返しの中で、読解力と自分の力で解決しようとする心の習慣を必ず身に付けていただけると考えております。

投稿者

長尾 一毅
長尾 一毅Accompany代表社員
現大阪公立大学大学院修士課程卒。大学・大学院では発達心理学を専攻し、ワーキングメモリ、子どものカテゴリー形成について学ぶ。
奈良・兵庫の教育業界で15年以上、様々な教科を指導し、国語科教科主任も担当。一般社団法人ワーキングメモリ教育推進協会の認定も受け、脳科学の知見やコーチング技術を指導に活かしている。